流砂量の取り扱い

掃流砂量式

掃流砂量式は、河道断面・斜面ごとに異なる掃流砂量式の選択が可能である。以下に選択可能な流砂量式を挙げる。

  1. 芦田・道上式
  2. 芦田・高橋・水山式(ATM)
  3. MPM式
  4. Brown式

流砂量式の選択は、入力データで指定するため、指定方法の詳細は、断面データ作成マクロ・斜面土砂作成マクロを参照のこと。

芦田・道上式

芦田・高橋・水山(ATM)式

MPM式

Brown式

浮遊砂の取り扱い

浮遊砂の取り扱いについては、従来の平衡流砂量を用いたものを使用する。

浮遊砂量式は、深さ方向の流速分布式と浮遊濃度式(基準点濃度に芦田道上式を使用)し、流速×浮遊砂濃度(Rouseの式)を深さ方向に積分したものを解析解として求めたものを用いる。浮遊砂量は、そのまま河床からの土砂の出入りを表現している。

基礎式

斜面からの給砂量

斜面から河道断面への土砂の供給は、次の6種類の方法を斜面ごとに選択できる。

  1. 一括投入(指定ハイドロ中に指定量を投入)
  2. 投入箇所の河道断面の流砂量見合いで投入(全量一括管理)
  3. 投入箇所の河道断面の流砂量見合いで投入(粒径別管理)
  4. 斜面ごとに流砂量を計算する。(粒径分布=指定粒径分布のまま)
  5. 斜面ごとに流砂量を計算する。(粒径分布=土砂の残量で変化)
  6. 斜面ごとに流砂量を計算する。(土砂の粒径別投入比率=指定粒径分布)

1~3の方法は従来の供給方法で、1は、指定の割合を指定ハイドロ中に強制投入、2・3は、接続する河道断面の流砂量(流砂量式で計算した素の値)分を投入するものである。4~5については、斜面ごとに指定の流砂量式により流砂量を計算し、それを給砂量とする方法である。ただし、斜面ごとに流量・川幅と河床勾配を入力データとして指定する必要がある。

ウォッシュロードの取り扱い(河道上の取り扱い)

河道でのウォッシュロードの取り扱いは、河床からの浮上量・沈降量を考慮する。 「ダム堆砂・排砂シミュレーションモデル」(劉 炳義、(社)建設コンサルタンツ協会近畿支部第28回業務研究発表会論集pp157-164,1995)によれば、ウォッシュロードの取り扱いは、次のように記載されている。 ウォッシュロードによる河床変動が浸食速度と堆積速度の差(Ewk-Dwk)によって算出される。ここで、Ewk:浸食速度、Dwk:沈降速度である。流れがある限界より弱くならないとウォッシュロードが沈降しないという考え方より、Dwkは以下のように表される。 ・・・(5.12) ここで、Wsk:粒径dkの沈降速度、Cak:粒径dkの河床付近における濃度で(5.8)・(5.9)式で求める。u*:摩擦速度、u*dk:粒径dkの粒子が懸濁できなくなる時の底面摩擦速度(沈降限界摩擦速度)である。 Ewkはについては、従来良く用いられている式を粒土組成のある場合に拡張した次式で求める。 ・・・(5.13) ここで、u*wk:粒径dkの粒子の浮上限界摩擦速度、ρbk:粒径dkの河床での存在比率、β・n:係数であり、岩下らの実験結果(「貯水池堆積物の浸食と汚濁の流出機構について」:岩下 修・塩田 洌 、電力土木No.212,pp93-103,1988)によれば、β=10-5~4×10-5、n=1.0~1.5である。一般に凝集性を有しない微細粒子の場合では、u*dkとu*wk同等と置くことができるとのことなので、本モデルでもu*dk=u*wkとしている。 劉の論文では、u*dkとu*wkの値を決定することは、きわめて困難で検証計算等が必要とされているが、「河川の土砂災害と対策」(芦田和夫・高橋保・道上正規、森北出版)P30の式(2.22)よりu*dk=u*wk=Wskと設定することとする。

○ Type1の取り扱い (1) WLの流下制御   断面区間:iについて考えると、1計算ステップの流下範囲は以下のように表現する。

図-5.3  断面区間:iから流下するWL成分の土砂は次の2つの起源に分類される。

①前計算ステップの断面区間内の流水塊が移流する範囲内で流下する土砂

図-5.4  これは、前の計算ステップで断面区間内に堆積しないで浮遊状態で滞留している土砂が次の計算ステップで下流に移動する場合に相当する。ただし、断面区間内の計算でWLの沈降量が算出される場合には、「滞留土砂量-沈降量」が下流に移動する土砂量となる。 下流断面区間への土砂の分配は、流下範囲全体に対する各断面区間の占める割合(流下距離按分)で行う。 ②1計算ステップ内に連続して流下する土砂

図-5.5  これは、1計算ステップの間に断面区間:iから連続的に流出する土砂を表している。この土砂は断面区間に接続する支川・斜面からの供給土砂、断面区間の河床から浮上する土砂がそれに相当する(土砂量を振り分ける際には断面区間:Iは含まない)。  下流断面への土砂の分配は、計算ステップの刻み時間に対する各断面区間の滞留時間の割合(流下時間按分)で行う。例えば、断面区間距離が同じでも流速が倍異なる箇所では、流速が2倍早い方の土砂濃度は遅い方の半分となる。

 WLの流下範囲を制御する場合には①・②を別々に考え、それぞれについて断面区間:iを出発点とした流出土砂量の分配を行う。この作業は河道内の断面区間数だけ行い、それらを全部重ね合わせたものが、個々の断面区間内に滞留する土砂量となり、次の計算ステップの①の土砂量に用いる。断面区間を通過した土砂量を重ね合わせたものが、断面区間の流出土砂量(変数名で言うとQF(K,J))になる。

(2) 河床変動計算について ある断面区間の河床変度量を計算する際に河床変動に関係する土砂量は一般粒径とWL対象粒径では別々の取り扱いとなる。 ① 一般粒径 ・ 断面区間の河床に流入する土砂量 断面区間に接続する支川の給砂:QR(K,J) 断面区間に接続する斜面の給砂:QT(K,J) 同じ河道の一つ上流の断面区間から流出する掃流砂:QB(K,J+1) 同じ河道の一つ上流の断面区間から流出する浮遊砂:QF(K,J+1) ・ 断面区間の河床から流出する土砂量 断面区間から流出する掃流砂:QB(K,J) 断面区間から流出する浮遊砂:QF(K,J) ② WL対象粒径 ・ 断面区間の河床に流入する土砂量 断面区間に接続する斜面の給砂:QT(K,J) 河床に沈降するする土砂(前の計算ステップの滞留土砂量より濃度を算出、沈降量≦前の計算ステップの断面区間内滞留土砂量) ・ 断面区間の河床から流出する土砂量 河床から浮上する土砂 ・ 断面区間からそのまま流出(河床変動には無関係) 断面区間に接続する支川の給砂:QR(K,J) 同じ河道の上流の断面区間から流出してそのまま通過する土砂量

 WL対象粒径では、支川からの給砂は河床ではなく流水中に供給されるので、河床変動に直接寄与せず、そのまま流下する。河床変動に関与するのは、斜面からの給砂と浮上量・沈降量となる。それ以外の起源の土砂は、前述のWLの流下制御に応じて下流断面区間に分配され、次計算ステップの断面区間内の滞留土砂となる。

ウォッシュロードの取り扱い(斜面からの給砂量)

流砂量変数の取り扱い

前節まで、Type1・2では流砂量の取り扱い様々な違いがあることを述べたが、ソース上の流砂量変数ではどうなっているのか。取り扱いの違いを下表にまとめた。

Type1・2の変数取り扱いの違い 流砂量変数名 Type1 Type2 Qb 掃流砂量、河床変動寄与 掃流砂量、河床変動寄与 Qf 浮遊砂+WL分量浮遊砂分のみ河床変動寄与 断面を通過する浮遊砂量+WL分河床変動に無関係 Qr 支川給砂量河床変動寄与 支川給砂量のうち掃流砂分のみ河床変動寄与 Qc 未使用 支川給砂量のうち浮遊砂+WL分河床変動に無関係 Qt 斜面給砂量、河床変動寄与 斜面給砂量、河床変動に寄与 Qu WL浮上量、河床変動寄与 浮遊砂+WL浮上量、河床変動寄与 Qz WL沈降量、河床変動寄与 浮遊砂+WL沈降量、河床変動寄与

上表のうち、「河床変動寄与」は河床から出入りする土砂量変数のことであり、「河床変動無関係」とは、河道断面区間の流水中を出入りする土砂量を表している。 例えば、Type2では、支川から河道に流入する浮遊砂+WL(変数名:Qc)は流水中に投入される(拡散方程式の項で表現)が、河床への沈降量(変数名:Qz)として間接的に河床変動に影響する。

 
tysrba/5.流砂量の取り扱い.txt · 最終更新: 2011/10/19 03:19 by tys
 
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